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<売店>
◆天竺書房



<日本語で読める「サンスクリット文学」>

   古代インドで記された多くの文献は、サンスクリット語で書かれているため原典をそのまま読むためには、まずサンスクリット語を学ばなければなりません。 しかし、ありがたいことに、多くの研究者の方々による努力のおかげで、今私たちはそれらの珠玉のような文献を、訳本という形で日本語で読むことができます。

   サンスクリット文献は多岐の分野にわたっていますが、まずは親しみやすい神話や物語からご紹介していきたいと思います。

   とはいっても、私自身まだそれほどたくさん読んだわけではありません。 そこで、私自身の蔵書録も兼ねて、自分が購入した本を少しずつアップしていきたいと思います。 まだ積読状態のものもありますが、興味をひかれる本があれば、どうぞ読んでみてくださいね。

  なお、現在手に入るものは売店の天竺書房にて表示してあります。 絶版になっているものは図書館にあることが多いので、探してみてください。

『バガヴァッド・ギーター』 岩波文庫 上村勝彦訳
 バガヴァッド・ギーターは、大叙事詩「マハーバーラタ」の第6巻に編入されている、18章700詩節からなる韻文です。 同族同士の戦場において、戦うことに疑問を抱いたアルジュナに、御者として同行したクリシュナが、アルジュナを鼓舞するために説いた教えが書かれています。
   この書は、ヒンドゥー教の聖典として、今日でも多くの人々によって愛読されていますが、ヒンドゥーという一宗教の教えというだけでなく、人間にとっての普遍的な真理が書かれていると思います。


『ナラ王物語』 岩波文庫 鎧 淳訳
 ナラ王物語も、大叙事詩「マハーバーラタ」の挿話で、第3巻に編入されています。
 王国を追われ、森の中に隠れ住むパーンドゥの王子たちを慰め励ますために、聖仙が王国を奪われたナラ王とその妃ダマヤンティー姫の数奇な運命を語ったものです。


『獅子座三十二譚』  澁澤龍彦文学館第12巻(筑摩書房) 松山俊太郎訳
<あらすじ>
 勇敢な王ヴィクラマ・アディティアが、天界でインドラ神より32個の女人像で飾られた王座を授けられ、それを地上に持ち帰った。 王の死後地中に埋められたその王座を、長い歳月の後ボージャ王が発見し、自分の王宮に据えた。そこに王が座ろうとしたら女人像の一人が王に、もし王がヴィクラマ王と同様の勇気、美徳を具えていなければそこに座ることはできないと言った。 そして女人像はヴィクラマ王の物語を語った。話が終わり、王が座ろうとしたら、別の女人像が同じように語り、32人の女人像がすべて話し終わると、彼女たちの呪いが解けて天界へ帰っていった。 実はこれらの像は呪いによって石にされていたのである。そして王はその王座に神の像を置き、長く栄えて世を治めた。


『ヒトーパデーシャ』  岩波文庫 金倉圓照・北川秀則訳
 「処世の教え」という副題の通り、世の中を処していくための教訓的寓話です。
 昔々、スダルシャナという王は自分の子供たちが勉強嫌いであるのを嘆き、どうにかして立派な人間にしたいと考えておりました。 ある日王は学者たちを集め、子供たちに学問を教えるものはいないかと尋ねました。 そのときヴィシュヌシャルマンという学者が6ヶ月の間に処世の学を王子たちに教育すると申し出たので王は彼に子供たちを託しました。 そしてからすや亀や鹿、ねずみなどが登場するお話を始めたのでした。

寓話という形の中に教訓詩を織り込んでいます。 国王として国を治める智慧のみならず、個人が世の中を生きていくための教訓でもあります。


『マハーバーラタ』  ちくま学芸文庫 上村勝彦訳
 インドの古典といえば二大叙事詩として「ラーマーヤナ」と共に知られており、世界史の教科書にも必ず記述されているので名前だけは知っている人も多いと思います。 前述の「バガヴァッド・ギーター」や「ナラ王物語」を初めとして多くの神話、説話、物語などが挿入されている全18巻10万詩節からなる壮大な叙事詩です。

 作者は聖仙ヴィヤーサといわれており、言い伝えではヴィヤーサがこの物語を語り、ガネーシャ神に書き取らせたといわれています(ゆえにガネーシャ神は学問の神と言われているそうです)が、実際には何百年もかかって今の形に整えられてきたと推定されているようです。

 従兄弟同士であるパーンダヴァの五王子とカウラヴァの百王子との確執と、一族を巻き込む大戦争がメインストーリーになっています。 インドでドラマ化され連続シリーズで放映された際には、放送時には街から人がいなくなってしまったというくらい、インドの国民的文学でもあり、インドの文化、思想、社会などを知る上でも重要な書物となっています。

 ちくま学芸文庫の「原典訳・マハーバーラタ」は、サンスクリット語原典からの初の日本語訳として出版されています。 当初全11巻が予定されていたそうですが、残念なことに翻訳者の上村先生が亡くなられてしまい、現在は第8巻までの出版になっています。 この仕事の後を継がれている研究者の方がいらっしゃるという話を聞きましたので、ぜひ続刊していただくことを望みます。


『ギータ・ゴーヴィンダ』  平凡社 東洋文庫 小倉泰訳
 作者は、12世紀の詩人ジャヤデーヴァ。クリシュナ神と恋人ラーダーとの恋物語の抒情詩です。 東インドで生まれたこの詩は、インド全域に広まり、音楽、舞踊、絵画、彫刻など芸術の題材としても有名で、現代でも広く親しまれています。

 内容は、モテモテのクリシュナが牛飼い女たちと戯れるのを、ラーダーが嫉妬し、悩み、悲しみ、女友達(サキー)に相談し、彼女のとりなしで結局クリシュナもラーダーのもとに戻るというものです。

 訳のみを読むと、エロティックな恋愛ものという印象も感じられますが、クリシュナとラーダーの関係は、宇宙の至高神と信者の関係を表しているといわれています。 ラーダーのクリシュナに対する無償の愛情は、人が神に対して抱く信愛(バクティ)を象徴しているのだそうです。文学的だけでなく、哲学的にも深い内容をもった詩なのです。

 第一番目の詩では、ヴィシュヌ神の十の化身(ダシャバターラ)を讃えています。

『デーヴィー・マーハートミャ』  平凡社 東洋文庫 横地優子訳
 「女神の偉大さ」と題されたこの聖典は、デーヴィー(女神)がマハーマーヤーとして出現し、アスラ(悪魔)たちを討伐し、世界に平和をもたらす様子を讃える詩で綴られています。

 ヴィシュヌのヨーガの眠り、まぶたに住むマハーマーヤー。 創造主ブラフマンに讃えられて出現し、ヴィシュヌは眠りから目覚める。 マドゥとカイタバ(2人のアスラ)を殺す。 かつてマヒシャがアスラの王であり、神との戦いに勝ち、神々はハリ(ヴィシュヌ)とハラ(シヴァ)に助けを求めた。それらの神々の熱光から生まれたチャンディカー女神。 それぞれの神は自分たちの持ち物や武器を彼女に与えた。そしてアスラたちを殺戮し勝利した。

 ヒンドゥー教で崇拝されている様々な女神たちは、すべてこのマハーマーヤーが、様々な姿で誕生したものとされ、シャクティ(性的あるいは生命エネルギー)の顕現として最高神に位置付けられています。
 ヴァーチュ、サーヴィトリー、チャンディカー、アンビカー、ドゥルガー、シュリー、ガウリー、カーリー、ラクシュミー、パールヴァティーその他、多くの名前で讃えられています。

 この「デーヴィー・マーハートミャ」を低唱する者は子孫繁栄、至高に到達、成功、幸福、健康、究極の解脱、願望成就、安楽など、この世のありとあらゆる望みを実らせ、一切の罪から解放されるといわれています。


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